任天堂でパワハラを受けて人生失敗したもみのきです。
任天堂で受けたパワハラの経験を元に、「あの時こうすればよかった」といった対処法とか発信しています。
今回は、2022年5月に話題になった、4630万円誤送金問題で濡れ衣を着せられた新入社員を取り上げ、私が任天堂で受けた濡れ衣被害をお話しします。
目次
4630万円 誤送金問題
2022年4月、山口県阿武町がコロナ関連給付金4630万円を誤って1人に振り込んでしまったという問題がありました。
振り込みを受けた田口翔容疑者は給付金を返金せずに逃走を図り、最終的に電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されました。
その後、誤送金で振り込まれたお金は、田口翔容疑者が利用した決済代行業者からその9割を法的により確保できました。
ただ、「誤送金した人は誰なのか?」、「チェック体制はなかったのか?」等の根本的な原因追求は6月現在も出来ていません。
誤送金問題の張本人ということで世間一般に晒され、誹謗中傷された新入社員ですが、実はそうではなかったとのことです。
その新入社員は上司の指示に従ってフロッピーディスクと書類を銀行に持って行っただけで、誤送金の原因であるフロッピーディスクのデータ作成に携わっていなかったとのことです。

以下はその証言です。
父親によると、出納室は2人態勢。3月までは室長とベテラン職員で業務を行っていましたが、4月にベテラン職員が異動し、新人職員の息子と室長の2人で作業することになったといいます。
誤送金が起こったのは、そのすぐあとのことです。
阿武町 新人職員の父親
「息子に聞いたらですね、上司の方から、これを銀行の方に持っていってくれと、クリアファイルみたいなものと、そのときにフロッピーとか書類とか入ってたみたいなんですけども、それを銀行まで持って行ったということでしたね」記者
「フロッピーの作成とかに全くかかわってない?」阿武町 新人職員の父親
「そうですね。全く。渡されたものを出しに行ったと」町にも確認したところ、新人職員の息子は書類などを銀行に持って行っただけで、給付金のミスとは無関係ということでした。
出典: 「犯人とグルじゃないか」誤送金で新人職員に“誹謗中傷”も 職員の父「銀行に持って行っただけ」|TBS NEWS DIG(2022/05/24 )※元記事と動画は削除されています(2022/06/01)

YouTubeではこちらの動画がその旨詳しく解説されてます。
その他問題の詳細は「4630万円 誤送金」等でググってみてください。
4630万円 誤送金問題 もし上司に濡れ衣を着せられてたら
誤送金問題の張本人ということで世間一般に晒され、誹謗中傷された新入社員ですが、上述の証言から実はそうではなかったとのことです。
新入社員の方は大変な目に遭いましたが、疑いが晴れてまだ良かったです。
ここで仮に、もし室長(直属の上司)に濡れ衣を着せられてたらどうなりますか?
例えば、こんな感じにです。
- 新入社員はフロッピーのデータ作成に全く関わっていない
→ 給付金データを作成したのは新入社員 - 新入社員は上司の指示に従ってフロッピーディスクと書類を銀行に持って行っただけ
→ フロッピーディスクと書類のチェックを含め、全ての責任は新入社員
しかも、もし誤送金問題の張本人が室長(直属の上司)だったらどうなりますか?
「この新入社員が担当者。全てはこいつの責任。こいつが全て悪い」
と、問題の張本人に濡れ衣を着せられたらその新入社員はどうなりますか?


その新入社員はその理不尽に耐えられるでしょうか?
私は任天堂で上司にそういった理不尽な仕打ちを何度も受けてきました。
任天堂を退職してずいぶん経ちますが、そういった事例を今でも100個ぐらい言えます。
その一例を次にお話しします。
任天堂のパワハラ 直属の上司に濡れ衣を着せられた事例
これは私が任天堂で社内技術サポートをしていたときの話です。
任天堂の携帯ゲーム機、ニンテンドーDS(Nintendo DS)が発売されて1年経った頃だったでしょうか。

任天堂はゲームを開発するためのツール、ライブラリをゲーム開発会社に配布していたのですが、その中の一つに3D CGプラグインというツール(以下ツールと省略)がありました。
イメージはこんな感じのものです。

デザイナーが3D CGアプリケーションを使って描いた3Dデータを、ニンテンドーDSで表示させるためのデータに変換するためのツールです。
そのツールの開発からゲーム開発会社に配布までの流れのイメージはこんな感じです。

簡単に流れを箇条書きにするとこんな感じです。
- アメリカの開発会社で3D CGプラグインを開発
- アメリカ支店でそれをチェックし、日本の社内技術サポート(私)に配布
- 私はそれをゲーム開発会社に配布するだけ。チェック不要
- ゲーム開発会社で酷い不具合が多発。私に苦情
- 部署内で「コイツが悪い」、「仕事が出来ない奴」扱いされる
- 評価では、「コミュニケーション力不足」とされ、最低評価を受ける
厳密には、ゲーム開発会社との間に社外技術サポートを挟むのですが、簡潔にするため省略します。
酷い不具合とはこんな感じです。
デザイナーが3D CGアプリを使ってこんな3Dキャラクタを作りました。

これを任天堂が配布したツールを使ってニンテンドーDS用のデータに変換しました。
で、ニンテンドーDSでその3Dキャラクターを表示させたらこんな酷い絵が表示されました。

キャラクターが穴だらけで背景が透けてます。
当然、こんな酷いツールでゲーム開発できないので、ゲーム開発会社から苦情が殺到します。
その酷い状況は社内の関係者にも広まり、部署内で「コイツが悪い」、「仕事が出来ない奴」扱いされるのです。
これを4630万円 誤送金問題の被害者の新入社員の事例と照らし合わせるとこんな感じです。
- 書類とフロッピーディスク
→ ツール - 書類とフロッピーディスクを作成したのは別の担当者
→ ツールを開発したのはアメリカの開発会社 - そのチェック担当者は別の者と上司
→ そのチェック担当者はアメリカ支店の担当者と私の直属の上司 - 新入社員はその作成とチェックに携わっていない
→ 私はそのツール開発とチェックに携わっていない - 新入社員はそれらを銀行に持っていくことが仕事
→ 私はそのツールをゲーム開発会社に配布することが仕事
その新入社員と同様に、私も上司の指示に従って仕事しただけで何の責任もありません。
さらに、私の場合、前述で「もし仮に」とあげた以下の例えが実際にあったのです。
しかも、もし誤送金問題の張本人が室長(直属の上司)だったらどうなりますか?
「この新入社員が担当者。コイツが全て悪い。コイツの責任」
と、問題の張本人に濡れ衣を着せられたらその新入社員はどうなりますか?
任天堂のパワハラ 直属の上司に濡れ衣を着せられた事例 詳細
上述の以下について説明します。
- チェック担当者は私の直属の上司
- 問題の張本人は私の直属の上司
- 直属の上司に濡れ衣を着せられた
3D CGアプリとツールについて
その前に、まず簡単に3D CGアプリとツールについて説明します。
上述のように、このとき問題となったのは以下のツールです。
- デザイナーが3D CGアプリケーションを使って描いた3Dデータを、ニンテンドーDSで表示させるためのデータに変換するためのツール
この3D CGアプリケーションとツールは複数あり、話がややこしくならないようにここでは以下のように呼ぶことにします。
- 任天堂社内で開発: ツールA(3D CG A用のプラグイン)
- (今回の)アメリカの開発会社で開発: ツールB(3D CG B用のプラグイン)
ツールは他にまだいくつかあるのですが、本記事の説明で必要なのは上記2つなので割愛します。
ツールBはツールAを元に開発したものです。
つまり、ツールBは、任天堂内製のツールAと同じ仕様になるようにアメリカの開発会社に外注して開発したものです。
なお、ツールBの開発当初、ツールB(3D CG B含めて)は任天堂社内のゲーム開発では使われていませんでした。
ツールBはゲーム開発会社のために開発されたもので、ツールBの開発当初、任天堂社内で3D CG Bについて詳しい者は一人もいませんでした。
チェック担当者は私の直属の上司
上述のように、ツールBの開発当初、私は社内技術サポートのメンバーでした。
社内技術サポートの仕事の一つに、外注で作ったツールの動作検証があります。
ツールBが任天堂の要求仕様通りに動作するかをチェックし、問題があれば開発会社に修正依頼しなければいけません。
これをリリースチェックと言いますが、そのリリースチェックで問題がなければゲーム開発会社にそのツールを配布します。
そのツールBの担当者は私の直属の上司(以下、S氏と略す)でした。
私は、S氏がチェック済みのツールBをゲーム開発会社に配布することが当初の仕事でした。
その経緯はこんな感じです。
ツールBを開発するにあたり、社内技術サポートのメンバーで誰がツールBを担当するのかをミーティングで話し合いました。

ここでS氏がこう言ったのです。
「このメンバーの中で3Dに一番詳しいのは俺。だから、俺がツールBを担当する」
メンバーで特に話し合うこともなく、S氏が自慢げにそう自分で決めたのです。
ちなみに、当初そのメンバーの中で3Dに一番詳しいのはたぶん私でした。
というのも、私はニンテンドーDSのハード開発時にゲーム開発環境の整備も担当していて、「ニンテンドーDSのゲーム開発で使う3Dアプリはどれがいいか?」をいろいろ検証してたからです。
ニンテンドーDSのハード開発時は、3D CGアプリケーションは10本以上それぞれの特徴を言えましたし、それらで出力した3DデータをニンテンドーDSで表示させるとどのように見えるかをPC(DirectX、OpenGL)で検証してました。
ゲーム開発環境の整備においても、ゲームキューブの上位ライブラリとツール(CGプラグイン)を使用し、ニンテンドーDSでどういったゲーム開発環境が必要かを調べてました。
ですので、私の方がS氏より3Dについて知識があったと思います。
ですが、私は何も言いませんでしたし、立候補もしませんでした。
理由は、今の仕事で手一杯だったからです。
社内技術サポートをほぼ一人で担当させられていて、今の仕事だけで朝から夜中まで働かされていて、とても他の仕事を請け負う余裕がなかったからです。

要は、満場一致でS氏がツールBの担当者と決まったのです。
何度も言いますが、私が担当者ではありませんでした。
問題の張本人は私の直属の上司
S氏がツールBの担当者と決まってからは、社内技術サポートのメンバーは誰もツールBの開発状況を知りませんでした。
S氏はツールBの開発の進捗状況をメンバーの誰にも共有していなかったからです。
そんなある日、S氏はツールBの担当を私に丸投げしました。

「ツールBの担当者は今日から君。ツールBは今週リリースするから。あとはよろしく」
と。
その際、ツールBに使う3D CG Bのパッケージも渡されました。

3D CG Bは使ったことはなく、見るのも初めてでしたので、当然こう返しました。
「そんなこと突然言われましても3D CG Bは触ったことないですし、触る時間もないので技術サポートは出来ません」
ちゃんとS氏にその無茶振りを断ったのです。
ところが、S氏は続けてこう言ったのです。
「大丈夫。ツールBはチェック出来てるので、君はリリースすればいいだけだから」
そうはっきりと言ったのです。チェックは不要と。
ところがです。
いざリリースしてみると上述の問題が起きたのです。

ツールBの出来があまりに酷いので、「うちらはデバッガー(不具合検証作業者)ではないぞ!」とゲーム開発会社に怒られる始末でした。
要は、(ツールBの担当者の)S氏がこれまでツールBをチェックしてなかったことが原因で問題が起きたのです。
問題の張本人は私の直属の上司、S氏でした。
何度も言いますが、私が担当者ではありませんでした。
直属の上司に濡れ衣を着せられた
上述のように、(ツールBの担当者の)S氏がこれまでツールBをチェックしてなかったことが原因で問題が起きたのです。
なのに、問題が起きた時点では私がツールBの担当者でしたので、私が原因にさせられたのです。
「コイツが担当者。コイツが全て悪い。コイツの責任」
といった感じで、S氏はツールBの全ての責任を私に押し付けたのです。

その後はS氏の尻拭いが仕事です。
普段の仕事さえ朝から夜中まで働いてなんとかこなしている状況の中、ボロボロのツールBの技術サポートまでさせられたのです。
しかも、ツールBで使う3D CG Bをこれまで触ったことがなく、勉強する時間もなく、周りに聞く人もいないという、完全孤立状態でツールBを担当することになったのです。
そんな無茶苦茶な仕事環境の中、必死で仕事し、ツールBをゲーム開発で使えるようにまで技術サポートしました。
3D CG Bを触ったこともなく、勉強する時間もないのに以下仕事を適切に行いました。
- ゲーム開発会社から送られてくる不具合データの原因特定
- ツール開発者への修正指示
- 質問者への回答・対応
- リリースチェック
その結果、ボロボロだったツールBはゲーム開発で使えるレベルにまでに改善しました。
このように、S氏の尻拭いをさせられた私ですが、そのS氏からは任天堂で常に最低評価をいただいてました。
「君のコミュニケーション力不足で問題が起きた」
ということです。
当然、その評価は給料に反映されるので、(事務系含めて)同期で最低額の給料だったと思います。
もちろん、評価はそれだけで判断されるものではないです。
ですが、上述でも「そういった事例を今でも100個ぐらい」と言ったように、他も同様です。
そういった事例はこのツールBだけでも、今でも10個ぐらい言えます。
ツールBのあまりに酷い不具合とは
「ツールBがどれだけ酷かったか」、「S氏がどれだけツールBのチェックの仕事をサボっていたか」をお話しします。
上述のように、ツールBでニンテンドーDS用に変換された3Dデータは、ニンテンドーDSではこんな感じに表示されました。

こんな酷い絵になって表示されました。
キャラクターが穴だらけで背景が透けてます。
突然ツールBの担当者になった私は、突然ゲーム開発会社からこういったデータを受け取り、急遽その問題の原因究明と開発者に修正指示をしなければいけなかったのです。
ただ、私は他の3D CGアプリケーションの操作方法は知っていたので、学習ゼロでもデバッグ程度なら感覚でこなせました。
これまでの独学で培った知識から、「背景が透けてるのは三角形の描画順序が逆になってるから」とすぐに気づきました。
三角形の描画順序とは、頂点と頂点を繋げる順序で、右回りか左回りかということです。

3Dのキャラクターデータは三角形が集まって出来ており、三角形の書き順が違う面は表裏が反転してしまうのです。
例えば、ひし形の場合、ひし形は2つの三角形で構成されています。

この2つの三角形のうち、下の三角形の書き順が間違って逆の順で描かれていた場合、表裏が反転してしまってきちんと表示されなくなるのです。
こんな感じに表示されてしまうのです。

3Dの詳細は、専門の解説サイトを参照してください。
デジタルハリウッド 3DCGデザイナー専攻等で学習されるのもいいでしょう。
で、3Dの初歩的説明はここまでとして、原因究明の作業です。
この3Dキャラクターデータの三角形を削除していき、不具合が起きる最小構成のデータ(不具合再現データ)を作ることから始めます。
当然、どこをどれだけ削れば良いのか分からないので、地道に三角形を削除して不具合再現データを作るしかありません。
結果、単純な五角形でも不具合が起きると分かりました。
不具合の詳細説明は複雑なのと、三角形に分割された五角形の画像を用意するのも面倒なので、先程のひし形を使います。

ツールBの不具合はこんなに酷いレベルでした。
つまり、S氏はツールBの最初のチェックすらせずにツールBの開発を進めてきたのです。
その手の施しようがないボロボロの状態のツールBを、私に責任転嫁するごとくゲーム開発会社に配布する直前に私に丸投げしたのです。
ちなみに、ツールBの開発者は別の仕事で忙しくなり、開発者は交代になりました。代わった開発者はコードのあまりの酷さに愕然としてました。「僕が一から作った方が早い」と。
任天堂 パワハラ対処法
4630万円誤送金問題で濡れ衣を着せられた新入社員を取り上げ、私が任天堂で受けた濡れ衣被害の事例を紹介しました。
私も上司の指示に従って仕事しただけで何の責任もありません。
- チェック担当者は私の直属の上司
- 問題の張本人は私の直属の上司
- 問題の直属の上司に濡れ衣を着せられた
ということです。
私は任天堂で上司にそういった理不尽な仕打ちを何度も受けてきました。
直属の上司だけでなく、岩田元社長の経営失敗の尻拭いもさせられました。
任天堂を退職してずいぶん経ちますが、そういった事例を今でも100個ぐらい言えます。
任天堂はホワイト企業で知られてますが、上司ガチャでハズレを引くともう終わりです。
任天堂では、被害者も自己責任で、たとえ加害者が悪くても権力のある方に社員は従います。誰も助けてくれません。
なので、このようなパワハラにあったら、休職しちゃってください。