数ヶ月の海外滞在を計画している方にとって、病気や怪我の時の医療費は大きな不安の一つですよね。
特に、住民税非課税世帯の方は、日本の国民健康保険(国保)を海外で活用することで、賢く医療費の備えができる可能性があります。
今回は、国民健康保険の「海外療養費制度」を徹底解説します。申請のポイントや、特に住民税非課税世帯の方が受ける大きなメリットについて詳しく見ていきましょう!
※本記事は2025年11月14日時点に調査した内容です。
目次
国民健康保険は海外旅行保険の代わりになる?
まず大前提として、日本の国民健康保険は海外でも使える仕組みがあります。これが「海外療養費制度」です。
国保の海外療養費制度の仕組み
この制度は、海外の医療機関で急な病気や怪我の治療を受けた場合に、帰国後に申請することで、一部の医療費の払い戻しを受けられるというものです。
⚠️ 国保と海外旅行保険の大きな違い
| 項目 | 国民健康保険(海外療養費制度) | 海外旅行保険 |
| 保険料 | 所得に応じて決まる(非課税世帯は格安) | 滞在期間や補償内容に応じて決まる |
| 払い戻し額 | 日本で同じ治療を受けた場合の保険点数を基準に算定されるため、現地で支払った額より大幅に少なくなることが多い | 契約内容に応じて、実際に現地で支払った額のほぼ全額が戻ることが多い |
| 支払方法 | 必ず現地で一旦全額を自己負担する必要がある | 現地の病院と提携していれば、自己負担なし(キャッシュレス)の場合がある |
国民健康保険の海外療養費制度は、あくまで「万が一の備え」であり、海外旅行保険の代わりにはならないことが多いです。しかし、次に説明する「保険料の安さ」という大きなメリットがあります。
住民税非課税世帯が受ける最大のメリット:保険料の安さ
住民税非課税世帯の方が国保に加入している最大のメリットは、毎月支払う保険料が大幅に軽減されることです。
7割軽減措置の仕組み
国民健康保険料は、世帯の前年の所得に応じて決まります。世帯の所得が一定の基準以下の場合、保険料のうち「均等割額」と「平等割額」が軽減されます。
住民税非課税世帯など、特に所得が低い場合は最大の7割(70%)が軽減され、納めるのは3割で済むんです。
具体例:阪神間の3都市を比較!7割軽減後の保険料
保険料は自治体によって金額に違いがあります。大阪、兵庫の主要都市で、7割軽減が適用された場合の単身世帯の年間保険料を比較してみましょう。(所得割はゼロとして計算)
| 世帯構成 | 大阪市(大阪府) | 神戸市(兵庫県) | 西宮市(兵庫県) |
| 単身世帯(40歳未満) | 約 26,937 円 | 約 23,523 円 | 約 21,924 円 |
| 単身世帯(40歳~64歳) | 約 32,572 円 | 約 29,733 円 | 約 27,648 円 |
このように、保険料は自治体によって金額に違いがあり、大阪市では年間約2.6万円ですが、西宮市だと約2.1万円で済むことが分かります。
西宮市のように保険料が安い自治体に住むことで、さらに経済的負担を減らしながら、海外での万が一に備えられるのは大きな魅力ですね。
海外でも国民健康保険が使える!海外療養費制度の基本
海外療養費制度を利用する上での、具体的なルールを見ていきましょう。
支給対象となる条件
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旅行中や滞在中に、急な病気や怪我で現地医療機関を受診したこと。
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日本国内で保険診療として認められている治療であること。(美容整形や予防接種などは対象外です)
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治療目的で渡航したのではないこと。
払い戻し額の計算方法
払い戻し額は、実際に現地で支払った金額ではありません。
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まず、**「日本国内で同じ病気や怪我を治療した場合にかかったであろう費用」**を基準に算出します。
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その費用に、年齢に応じた自己負担割合(通常3割)を差し引いた金額が支給されます。
現地でかかった費用が高額でも、日本での費用が低く算定されれば、払い戻される額も少なくなることに注意が必要です。
海外療養費支給申請の手続き(現地での準備が最重要)
払い戻しを受けるためには、帰国前に現地で書類を準備することが非常に重要です。
必須書類のリスト
特に重要なのが、現地の医師に記入してもらう以下の2つの書類です。
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診療内容明細書(Form A):受けた診療の内容を細かく記載してもらう書類。
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領収明細書(Form B):支払った医療費の項目別の内訳を記載してもらう書類。
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添付書類: 領収書、パスポートのコピー(出入国日のスタンプが確認できるもの)、世帯主のマイナンバーカード(または通知カード)など。
現地で注意すべきこと
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これらの書類は、現地の病院に用意してもらい、医師に記入・署名してもらう必要があります。
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日本語以外の言語で書かれている場合は、日本語の翻訳文を添付する必要があります。(ご自身で翻訳しても大丈夫な自治体が多いです)
帰国後の申請場所と期限と必要な持ち物
申請場所や申請に必要な持ち物は自治体によって異なります。必ずお住まいの市区町村のホームページで事前に確認してください。
例として、大阪市の場合、主に以下のものが必要になります。
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国民健康保険証
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世帯主の振込先口座情報(通帳など)
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世帯主および被保険者(治療を受けた方)のマイナンバーが確認できるもの
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上記「必須書類のリスト」で準備した全ての書類(診療内容明細書、領収明細書、それぞれの日本語訳など)
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パスポート(渡航期間を確認するため)
期限: 医療費を支払った日の翌日から2年以内です。期限が過ぎると申請できなくなるので注意しましょう。
高額な治療費も安心!海外での高額療養費制度の適用
海外での治療費が高額になってしまった場合、高額療養費制度も適用できる可能性があります。
制度の概要
高額療養費制度とは、ひと月の医療費の自己負担額が上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。
住民税非課税世帯の自己負担限度額
住民税非課税世帯の方は、所得が最も低い区分に該当するため、ひと月の自己負担限度額が非常に低く設定されています。
| 区分 | ひと月の自己負担限度額 |
| 区分 II(非課税世帯等) | 57,600 円 |
※この限度額は、海外療養費として払い戻される額(日本での保険診療費)に対して適用されます。
特別な手続きは不要
自治体は、海外療養費支給申請された医療費を「日本国内で保険診療を受けた場合の費用」に換算します。
この換算後の金額が、住民税非課税世帯の**「ひと月の自己負担限度額(57,600円)」**を超えていた場合、超えた分が自動的に高額療養費として計算されます。
つまり、海外療養費の申請が高額療養費の申請を兼ねている形になります。
申請から支給までのスケジュールと注意点
海外療養費や高額療養費の申請は、医療費を立て替えることになるため、いつお金が戻ってくるのかが気になりますよね。
支給までの期間
申請を受け付けてから、審査を経て支給が決定するまで、通常3〜4ヶ月程度かかります。
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提出された書類の精査や、日本での保険点数に換算する作業に時間がかかるためです。
【重要】一旦全額を自己負担する必要があります
高額療養費制度を使う場合でも、海外の病院では**「限度額適用認定証」を使うことはできません**。
そのため、治療費が高額であっても、まずは全額を現地で自分で支払う必要があります。資金の計画を立てておくことが大切です。
海外療養費制度と高額療養費制度は、帰国後に同時に申請することができますので、忘れずに手続きを行いましょう。
参考動画
国民健康保険の海外療養費 支払い申請について解説されている動画があったので紹介しておきます。
海外療養費支給申請から受け取りまで詳しく解説されています。
海外療養費支給申請から受け取りまで詳しく解説されていますので、こちらを参考にしてください。
【国民健康保険の海外利用】フィリピンで支払った医療費を国民健康保険海外療養費支払申請してみました(酒匂カレンのルソンの壺 / Luzon Jar Ch)2022/04/25
【国民健康保険の海外利用】フィリピンで支払った医療費を国民健康保険海外療養費支給申請した結果、一部医療費の払い戻しを受けることが出来ました(酒匂カレンのルソンの壺 / Luzon Jar Ch) 2022/11/08
この動画では、フィリピンで高額療養費制度を利用した場合もシミュレーションされてます。
注意点として、日本国内での治療に換算後の超過分は自己負担になる、ということです。
なので、この動画でも考察されてるように、日本の医療費よりも高額な国に渡航される場合、何らかの対策が必要です。
(予防策)
- 普段の健康管理
(対策)
- 日本に帰国して治療
- クレジットカード付帯の海外旅行障害保険と併用
タイで気管支炎になって海外療養費を申請
体験談を以下記事にまとめています。






