日本と東南アジアでセミリタイア生活しています。
最近では1年4ヵ月間日本に帰国することなく東南アジアで生活していました。
近いうちにタイでリタイアメントビザを取る予定で、東南アジアでの滞在期間はさらに延びると思います。
ですが、住民票は残します。
その理由を詳しくまとめました。
※内容は2023年7月時点のものです。
目次
はじめに
本記事は2年前(2021年)にYouTubeにアップした以下動画の改訂版です。
【日本】海外セミリタイア 住民票を残す理由。住民税を0円にする方法を具体的に解説 2021/10/14
この動画投稿以降にも関連動画やブログ記事をアップしているのですが、あまり見てもらえていないようなので、それらも一覧できる形に改訂して投稿することにしました。
住民票を残す理由 概要
海外に長期滞在しても住民票を残す理由は、少ない出費で日本の手厚い社会保障を受けられるからです。
実例として、僕が支払った税金と保険料をお見せします。
2021年はこうなりました。
- 住民税: 0円
- 国民年金: 0円
- 国民健康保険: 年間26,532円
所得が少なかったので住民税は非課税でした(住民税非課税世帯)。
住民税非課税世帯だったので、国民年金は全額免除、国民健康保険は7割軽減でした。
なお、40歳以上65歳未満の国民健康保険料は以下の合計金額になっています。
- 医療保険料
- 後期高齢者支援金
- 介護保険料
結果、納めた税金と支払った保険料の出費は、年間2.6万円でした。
国民年金は全額免除でも将来年金を受け取れます。
全額免除の場合、将来受け取れる年金額は、全額納付した場合の年金額の2分の1になります。
結果、総支払い額(年間)は次のようになります。
- 総支払い額(年間) = 国民健康保険 年間2.6万円 – 老後に受け取る国民年金 年間38.4万円(月3.2万円 x 12ヶ月) = 約–36万円
※計算を簡単にするため、国民年金を40年間全額免除で計算
将来36万円(年間)得します。
2022年はこうなりました。
- 住民税: 年間5,800円
- 国民年金: 0円
- 国民健康保険: 年間26,280円
所得税は0円だったのですが、住民税は均等割だけ支払うことになりました。住民税非課税になれませんでした。
均等割の内訳は↓でした。
- 市民税: 3,500円
- 県民税: 2,300円
それでも2022年に納めた税金と支払った保険料の出費は、年間3.2万円でした。
2023年も均等割だけ支払うこととなり、2022年と同額程度の出費になります。(詳細をまだ確認できていないため割愛)
詳細については、後述の「住民税を0円にする方法」で説明します。
住民票を残すと得する人
住民票を残すと得する人は次のような人です。
- セミリタイア生活者
- 個人事業主
セミリタイア生活者とは、生活していけるだけの貯蓄に加えて、投資による配当などの不労所得や最低限の労働収入などを得ながら、なるべく働かずに生活するライフスタイルを送っている人です。
「住民票を残す理由」をテーマにしているので、海外に長期滞在するセミリタイア生活者が該当します。
以下の人は住民票を残すメリットがない、または、状況によるので判断が難しい等の理由から、対象外です。
- 海外駐在員や現地採用のようなサラリーマン
→ 節税ができないのでメリットがない - 海外で暮らす年金受給者や高齢者
→ 国民年金の支払い全額免除の恩恵がない
→ 65歳以上は高額な(?)介護保険料支払い義務がある - 子供がいる・配偶者がいる人
→ 様々なことを考慮する必要があるので判断が難しい
海外セミリタイア生活者が住民票を残すと得する理由(反論)
僕はもうすぐ50歳になり、タイでリタイアメントビザを取得する条件を満たすので、近いうちにタイを主な拠点として海外セミリタイア生活する予定です。
すでに準備は完了しています↓。
なお、住民票は残します。
上述の通り、住民票を残すと得する人、海外セミリタイア生活者になるからです。
ここで、海外セミリタイア生活者が住民票を残すと得する理由を、住民票を残すことへの反対意見、住民票を残すデメリットを否定する形で説明します。
なお、「住民票を抜かずに海外1年以上滞在は可能?違法では?」と疑問に思う人も多いと思います。
以下記事に「問題ない」旨まとめましたので、まずはこちらを必ず読んでおいてください。
住民税の支払い義務
住民票を残すと住所に記載した市に住民税を支払う義務があります。
ただ、それは大きな収入がある場合です。
リタイア生活で収入がなければ住民税は払う必要はないです。
なお、住民税は前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課税されるので、今年収入がなくてもリタイア生活の初年度は前年度の住民税課税が発生します。
ですが、その退職後の初年度の住民税も0円にすることが可能です。
その方法を以下動画で僕の経験談を交えて説明しているので参考にしてください。
【究極節税】任天堂を早期退職。ベストな時期は○月○日!税金・保険116万円が0円に!具体的な手順を教えます(2023/04/14)
退職後以降に住民税を0円にするには、収入がないことを市に知らせるために、確定申告書を提出する必要があります。
なお、収入があっても所得を低くし、住民税を0円にすることも可能です。
その方法については、後述の「住民税を0円にする方法」で説明します。
国民年金の支払い義務
住民票を残すと国民年金を支払う義務があります。
ですが、リタイア生活で収入がなければ国民年金は全額免除できます。
リタイア生活の初年度に全額免除の申請をしておけば、それ以降は自動的に全額免除されます。
国民年金は全額免除でも将来年金を受け取れます。
僕の場合、サラリーマンを引退後は基本的に国民年金は全額免除ですが、将来年金をこれだけ受け取ることができます↓。
一方で、住民票を抜いて国民年金の支払いを放棄した場合、その期間は国民年金を納めていないので、受け取る年金が減額されてしまいます。
また、不慮の事故で身体障害者になったり、がんや糖尿病など内部疾患で身体に障害を持ってしまった場合、本来国民年金で受けられた恩恵、障害年金を受けられなくなります。
なので、リタイア生活で海外移住する場合でも、国民年金は支払いを放棄するのではなく、免除申請するのが最適です。
なお、以下計算式から、収入があっても所得が低ければ国民年金の支払いは全額免除されます。
全額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
出典: 「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」-「保険料免除・納付猶予の承認基準(所得の基準)」
国民健康保険は不要?
住民票を抜く派がよく言ってるのが、
「海外移住先では日本の国民健康保険はほとんど使えなくなるので、入る必要はない」
ですが、いえ、国民健康保険には入っておくべきです。
日本の国民健康保険は世界一優れた健康皆保険といっていいほどコスパが良く、保証範囲が広いです。
国民健康保険は軽減制度が設けられているので、低収入や無収入なら年間の支払い額は2万円から3万円で済みます。
参考までに、日本の国民健康保険とタイの民間の健康保険とを保険料で比較した動画をアップしているので見てください。
【タイ】長期滞在の医療費 どれがベスト? やっぱり日本の国民健康保険でしょ 2021/10/01
動画で説明しているように、日本の国民健康保険は海外でも使えます。
国民健康保険に加入している方が海外旅行などで急なケガや病気のため現地の医療機関で診療を受けたときには、医療費を支払ってから2年以内のものについて請求できます。
国民健康保険 海外の医療機関にかかった場合、国民健康保険で給付を受けられますか
実際に、僕はタイの病院で治療を受け、その医療費用を国民健康保険の海外療養費で支払い請求しました。
結果、支払った医療費の5割から6割を海外療養費として支給してもらえました。
さらに、海外でも高額療養制度が使えるので自己負担額は信じられないほどに軽減されます。
マイナンバーは不要?
住民票を抜くとマイナンバーは使えなくなってしまいます。
住民票を抜く派がよく言ってるのが、
「マイナンバーは不要」
ですが、いえ、マイナンバーは必要です。
2018年頃までは新規に口座する時にしかマイナンバーは問題にならなかったのですが、2021年以降はマイナンバーがないと日本の銀行口座や証券口座を維持できません。
証券会社から株の配当や議決権も郵送されるので、物理的にも日本の住所が必要です。
特に、日本の銀行口座から海外の銀行口座に送金する時もマイナンバーが必要です。
世界的にマネーロンダリングの規制が厳しくなっているので、
住民票を抜く = 日本の金融機関の口座を捨てる
ぐらいの覚悟が必要です。
なお、住民票を抜いてもWISEは使えるので、日本以外の銀行口座間の送金手段は特に困らないです。
住民票を残すメリット
これまで住民票を残すデメリットに反論してきましたが、次は住民票を残すメリットをいくつかあげます。
クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険を受けられる
日本で発行されているクレジットカードには基本的に海外旅行傷害保険がついています。
保険には、自動で保険が適用される自動付帯、クレジットカードを利用した後に適用される利用付帯の二種類があります。
利用付帯はさらに、日本を出国前に利用後と海外旅行中に利用後の二種類あります。
それにより、複数のクレジットカードをうまく使い分けることで、クレジットカード付帯の海外旅行保険のみで、保険を切らすことなく海外に滞在することが可能です。
ただし、年に一回日本に帰国し、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険をリセットする必要があります。
この方法を巷では裏技と言います。
つまり、複数のクレジットカードを組み合わせることで、実質保険料金0円で海外旅行傷害保険を一年間入ることが可能です。
実際、僕は4枚のクレジットカードを持っていて、それらで実質保険料金0円で海外旅行傷害保険を一年間入ることが可能です。
前述の国民健康保険で説明したタイの病院で支払った医療費では、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険と組み合わせて自己負担額を0円にできました。
もちろん、日本でクレジットカードを作るにはマイナンバーが必要です。
リタイアメントビザでも収入を得られる
リタイアメントビザで海外移住する場合、現地で働いて収入を得ることできません。
日本食レストラン等で無償で働いて、(お金ではなく)まかない料理をいただく、ということも禁止されています。
つまり、住民票を抜いた場合、収入は現地の銀行口座の利息と証券会社の口座の資産運用のみになってしまいます。
一方で、日本に住民票を残した場合、リタイアメントビザで海外移住しても、個人事業主としてフリーランス業務委託、ブログのアフィリエイト、YouTube等で収入を得ることができます。
住民税を0円にする方法
住民税非課税世帯になるために
住民税非課税世帯になるには、以下のいずれかの申告が必要です。
- 住民税申告
- 確定申告
住民税申告は、収入がなくてても申告をする必要があります。さらに、住民税申告は市役所に出向く必要があるので面倒です。
なので、住民税非課税世帯になるには、以下のようにして確定申告するのが良いです。
- 個人事業主に登録する
- 経費を増やして事業所得を出来る限り減らす
- 控除額を増やすため、青色申告で確定申告する
- 合計所得金額が住民税非課税世帯になる所得金額にまで減らす
- 海外滞在時でも提出可能にするため、確定申告書はe-Taxで提出する
なお、昨年の2022年、「年収300万円以下の副業は、原則として雑所得とする」という国税庁からの通達が話題になりましたが、結局これはなくなりました。
「副業の年収が300万円以下であっても、帳簿を付けていれば、基本的に事業所得と認める」と修正されました。
もちろん、個人事業主の所得においても、これまで通り、帳簿をつけていれば年収に関係なく事業所得で申告できます。
住民税非課税世帯になる所得金額
住民税非課税世帯になる所得金額は自治体によって異なります。税金を納付する(住民票を置いている)市に従います。
住民税は「均等割」と「所得割」の2つで構成されており、うちの自治体の場合、それぞれの非課税になる条件はこうなってます。
- 均等割、所得割ともにかからない人の所得(住民税非課税世帯になる人の所得)
前年の合計所得金額が次の算式で求めた額以下
→ 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族の数(◆)+1)+32万円+10万円
→ 同一生計配偶者も扶養親族もいない場合は45万円 - 所得割がかからない人の所得
前年の総所得金額等の合計額が次の算式で求めた額以下
→ 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族の数(◆)+1)+21万円+10万円
→ 同一生計配偶者も扶養親族もいない場合は45万円
※合計所得金額: 純損失、雑損失又は譲渡損失などの繰越控除を適用しないで計算した合計額
※総所得金額等: 純損失、雑損失又は譲渡損失などの繰越控除後の合計額
単身世帯主の場合、住民税非課税世帯になる人の所得は45万円(年間)以下です。
ただし、損失繰越控除適用前の所得で計算されることに注意です。
僕はこれが原因で2022年(2021年分)、2023年(2022年分)は均等割が発生し、住民税非課税世帯になれませんでした。
なお、親の年金収入を含めると計算が面倒になるので、親と同住所でも世帯を分ける(世帯分離する)といいです。
住民税非課税世帯になる所得金額の例
住民税非課税世帯になる所得金額の例として、以下を内容で確定申告するケースを見てみます。
確定申告の区分はこんな感じです。
●収入
・事業
・利子
・配当
・給与
等
●経費
・旅費交通費
・消耗品費
・新聞図書費
・広告費
・人件費
・交際費
等
(家事按分対象)
・家賃
・水道光熱費
・通信費
等
●所得控除
・社会保険料控除
・国民健康保険
・基礎控除
48万円
・給与所得控除
55万円
・青色申告特別控除
65万円(e-Tax提出)
等
これら区分に住民税非課税世帯になる所得金額(年間)例をあてはめると、こんな感じになります。
●収入
・事業
・65万円(クラウドソーシング)
・63万円(YouTube)
・44万円(ブログ)
・給与
・103万円(アルバイト)
●経費
・旅費交通費
・50万円(宿泊費)
・10万円(飛行機代)
●所得控除
・社会保険料控除
・3万円(国民健康保険)
・基礎控除
・48万円
・給与所得控除
・55万円
・青色申告特別控除 e-Tax提出
・65万
この場合の合計所得金額はこうなります。(以下、単位万円を省略)
給与所得 = 収入(103)- 所得控除(55)= 48
事業所得 = 収入(65 + 63 + 44) – 経費(50 + 10)- 所得控除(3 + 65 + 48)= -4
給与所得 + 事業所得 = 48 – 4 = 44 < 45
合計所得金額は45万円未満となり、年収は275万円もあるのに住民税は非課税です。
なお、FX等の雑所得や株の損失繰越がある場合、いろいろ注意点があります。
以下記事にまとめているので参考にしてください。